「ソダシ」はいいねえ。リリンの生み出した馬の極みだよ(渚カヲル談)
・白毛馬の珍しさは、0.007%。約14,000分の1の確率。(参考:わが国のサラブレッド種における 白毛の遺伝について)
・JRA史上初の「白毛G1馬」。生涯成績、16戦7勝(うちG1レース3勝)。
「強くて美しい」けれど、実は遺伝的に「問題」はないのでしょうか?そんなことを今回は書いていこうと思います。
1.遺伝子の優性/劣性:「優性=優れた形質」ではないのです。
遺伝子の優性/劣性は「その形質が表に出るか出ないか」だけに過ぎません。しかし「優性=優れた形質」と勘違いする人がいまだにいます。なぜこの誤解が生まれるのでしょうか。おそらくは「言葉の問題」です。「優性/劣性」という「言葉」は「優生思想」に結びつきやすく、社会的偏見を助長してきた歴史があります。そのためか、現在は「顕性/潜性」と学校で習います。
「劣性遺伝子」の身近な例:金髪vs黒髪、青い目vs黒い目。実は「金髪碧眼」は「2つの劣性遺伝子」の結果だったりします。
「劣性」の方が実は多数派の例:血液型のO型は、身近な「劣性同士」の例ですが、世界的には最も多い血液型だったりします。
でも、「金髪碧眼」も「血液型のO型」も、別に「人類として」劣っていることはありませんよね?
2.馬の「白毛」は遺伝子の突然変異。
馬の「KIT遺伝子」は毛色を決める“スイッチ”の一つ。この遺伝子が突然変異すると白毛になるんです。(参考:馬ゲノム研究の現状)
この突然変異で、メラノサイト(色素細胞)が毛根に届かなくなります。その結果、白毛になります。
KIT遺伝子は細胞の増殖や移動を制御する重要な遺伝子で、突然変異があると“色素細胞が毛根にたどり着けなくなる”んです。
この突然変異を受けたのが、「ソダシ」のおばあちゃんの「シラユキヒメ」。
「シラユキヒメ」の子孫には「白毛」の割合が多いです。この「白毛馬」たちのことを、「シラユキヒメから続く“白毛一族”」なんて呼んだりします。つまり、「ソダシ」は遺伝子レベルで「真っ白キャラ」に生まれることが運命づけられていたんですね。
「ソダシ」自身は、その勝ち鞍から「白き桜の女王」なんて現役時代は呼ばれてました。綺麗なあだ名です。
3.数は少ないけれど「白毛」は優性遺伝。では「なんで数が極端に少ないの?」
生存に不利な身体的要因(皮膚がん、視覚障害などが起きやすい等)は特にないようです。
繁殖上の問題も特にありません。
どうやら、人為選択の結果として「数が減った」のが一番大きいようです。他の馬と比較して「目立つ」ので、軍馬としては不適当なため、白毛や芦毛の馬はあまり積極的に採用されなかったらしい(参考:第五章 競馬法の制定)です。昭和天皇の御料馬「白雪」に対する宮内庁の「白馬では敵の目につくなどの理由をつけて辞退しようとした」というエピソードからも、それが窺えます(参考:白雪_(御料馬))。
4.アルビノや他の動物との比較
アルビノとの違い:アルビノも突然変異の一種です。ただ「白くなる原因」が異なります。アルビノの「メラニン欠乏」と、「白毛遺伝子」は違います。アルビノはそもそも「メラニン色素」が作れないのです。これは視覚障害や感覚器の問題を伴いやすい突然変異です。
自然界にも、白いライオン、ユキヒョウ、白ウサギ、シロクマなどがいます。海にはシロナガスクジラもいますね。身近な動物ですと、白い猫とか、白い犬とか、普通にいますね。
どうやら「自然界の動物」と「家畜」「愛玩動物」では「毛色の違い」での生存確率は違うようです。家畜化の過程で、白っぽい個体が人間に選択されやすい(目立つので管理がしやすい)という仮説もあります。(参考:家畜化による生物学的変化)
<まとめ>
「優れた形質」は存在しますが、それは「優性遺伝子」が顕現したからではないのです。
今後、より正確な表現「顕性/潜性」が浸透するといいですね。
馬の「白毛」は突然変異。でも「顕性遺伝子」として子孫に生き継がれます。なので白毛馬の子孫には白毛馬の割合が多いのです。
そして。
「ソダシ」は「美しく強い白毛馬」です。これだけは譲れません(笑)
今回は、ここでおしまい。